未成年後見制度ついて
未成年者(18歳未満)は、通常、父母などの「親権者」のもとで生活し、養育や教育、財産の管理などは親権者が責任をもって行っています。
しかし、親権者が亡くなったり、行方不明になったりして不在となる場合や、心神喪失(※1)などにより事実上親権が行えない場合には、親権者は未成年者の身の回りの生活や財産の管理を十分に行うことができず、未成年者は必要な監護(※2)や教育が受けられなかったり、財産が不適切に処分されてしまう可能性があります。
こうした場合に、未成年者を支え、生活の安定や権利を守るために、家庭裁判所が「未成年後見人」を選任する制度が「未成年後見制度」です。
未成年後見人は、親権者と同様の権限を持ち、監護教育権、子の人格の尊重等、居所指定権、職業許可権、財産管理に関する権限を有します。監護教育とは、子を心身ともに健全な成人に育成することとされており、未成年後見人は親権を行使する者と同一の権利義務を有するとされていることから、「親代わり」と称されることもあります。以前は、未成年後見人は親族が中心的な存在であったため、そのようなイメージが定着したと思われますが、現在は司法書士や弁護士、社会福祉士など親族以外の第三者が未成年後見人に選任される割合が高くなってきています。
(※1) 心神喪失とは、精神の障害や病気などの影響で、善悪や結果を判断できない、または判断に従って行動することができない状態を指します。
(※2) 監護とは、未成年の子どもや判断能力が十分でない人の生活や身の回りの世話をし、保護・養育することを指します。


未成年後見が始まるとき
未成年後見制度は、次のように親権者が不在になったり、親権者が管理権(※3)を有しなくなった時点で必要性が生じます。
- 父母が共に亡くなった場合
- 父母が離婚後に一方の親が親権を持っていたが、その親が亡くなった場合
- 父母が長期間行方不明の場合
- 虐待、ネグレクト等により親権が制限された場合
- 父母が心神喪失になった場合など
未成年後見人を選任してもらう手続きは次の2つのパターンがあります。
- 未成年者本人または親族、市区町村長などが家庭裁判所に対して申し立てる
- 最後の親権者が遺言で自分が亡くなった後の未成年後見人を指定する
家庭裁判所に申し立てられた場合は、家庭裁判所は申立ての内容を審査し、適切と判断された場合に未成年後見人を選任します。
(※3) 管理権とは、未成年の子どもの財産を管理するための権利・義務のことを指します。これは、親権の一部です。

未成年後見人が選ばれるまでの流れ


未成年後見人の役割
選任された未成年後見人は、親権者に代わって、次のような職務を行います。
- 未成年者の生活環境や教育方針に関する決定
- 居住場所や学校に関する手続き
- 医療・福祉サービスの利用に関する判断と支援
- 銀行口座や不動産などの財産の管理
- 財産の売買・贈与・担保設定などの法律行為の代理
後見人は、未成年者の心身の状況や生活背景に配慮しながら、財産については「自己の財産以上に慎重に」扱うよう求められています。
すべての判断や行動は「未成年者の最善の利益」を軸に行われます。


未成年後見が終わるタイミング
未成年後見制度は、次のように事由により終了します。
- 未成年者が成人したとき
- 未成年者が婚姻したとき(成人とみなされる)
- 未成年者が養子縁組をして養親ができたとき など
未成年後見が終了した際、後見人は預かっていた財産を、未成年者が成人または婚姻した場合には未成年者へと引き継ぎ、
未成年者が養子縁組した場合には養親へと引き継ぎます。
司法書士と未成年後見
司法書士は、登記や法律手続きの専門職であり、成年後見制度においても専門的な立場から多くの支援を行ってきました。
近年、社会的養護が必要な子どもたちへの支援の必要性が高まる中で、司法書士が未成年後見人として活動する機会も増えています。
「国民の権利を擁護し、もって自由かつ公正な社会の形成に寄与すること」(司法書士法)を使命とする司法書士が、
国の未来を担う子どもたちが一人も取り残されることなく健全に成長するために、成年後見事業において蓄積したノウハウを活かしながら
未成年後見に取り組むことは、社会的意義があると考えています。
よくあるご質問(Q&A)
- 未成年後見人になれるのは誰ですか?
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特に資格制限はありませんが、未成年者の福祉を優先できる方であることが必要です。
親族だけでなく、司法書士などの第三者が選任されることもあります。
- 未成年後見人になった後は、どれくらいの頻度で活動が必要ですか?
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財産管理や生活支援の状況に応じて定期的な対応が必要になります。
家庭裁判所への報告義務などもあります。
- 司法書士に依頼することのメリットは?
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法律手続きに詳しく、財産管理の専門知識もあるため、適切かつ公平な支援が期待できます。
また、中立的な立場で継続的な支援が可能です。
最後に
未成年後見制度は、保護者を失った子どもたちが安心して暮らし、健やかに育っていくための大切な制度です。
司法書士は、子どもの最善の利益を考えながら、法的にも実務的にも支援ができる専門家として、この制度に真摯に取り組んでいます。




